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TOP連載特集「The Evangelist」第五回 / 2020.03.13 掲載
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「2025年の崖」とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の離職やサポート終了などによるリスクの高まりなどに伴い、国際競争への遅れや我が国経済の停滞などの経済損失が生じる可能性を意味する言葉であり、経産省のDXレポート の中で指摘されました。

昨年11月に掲載の第四回「デジタル・トランスフォーメーション(DX)の概要」は、「2025年の崖」について、その対策の視点からご紹介しました。
今回は、2025年の崖について、経済産業省が指摘する課題は何なのか?解決策は?どのように進めればよいの?といったことや、第四回記事との関連についてわかりやすく説明させて頂きます。

2025年の崖

経済産業省から提示されたDXレポートによると「2025年の崖」とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システム(以下:レガシーシステム)が残存した場合に想定される国際競争への遅れや日本経済の停滞をさす言葉として説明されています。

課題1: ビジネス活動の中心がITへ

旧来、日本のITは高度な電算機としての扱いが多く、主にビジネスを進める際のツールとして利用されてきた。

これに対し、今後は、スマートシティ化やIoTの発展などにより、ITの活用を中心としたビジネス活動にシフトしていく。

新しいビジネススタイルでは、スマートフォンや自動運転の自動車など、利用するデバイス等が中心となっていくため、レガシーシステムと接続して業務処理を行うためには大幅な改修・コストが発生する。

 

課題2: レガシーシステムのブラックボックス化

ユーザー企業では、自社システムの外部委託開発やベテラン社員の職人技などにより内部構造が複雑化し、自社で修正できない状況に陥ってしまっている。

また、21年以上稼働しているレガシーシステムが約6割を超える試算となっており、ITを中心としたビジネス活動に対応しきれないなどの弊害が起こり、事業機会の損失が発生している。

 

課題3: 有識者の退職によるノウハウの損失

レガシーシステムの維持・保守を行っていたベテラン社員が定年退職を迎え、離職が増えることにより、蓄積したノウハウ喪失による損失が発生する。

このような状況を打破するにはスキルやリソースに関する協力をITパートナーに仰ぐこととなるため、多くのコストが費やされている。

上記の課題により刷新に乗り遅れた場合、
2025年以降に生じるレガシーシステムによる経済損失は最大で12兆円/年にのぼる
と推定されることがDXレポートで報告されている。

 

2025年の崖のシナリオ

クライアントPCで重要なOSであるWindows XPやWindows 7のサポート終了に伴い、企業ではシステムの見直しが進められています。

また、基幹系システムについては、2025年には稼動21年以上のシステムの割合が6割に増え、複雑化・老朽化・ブラックボックス化によるメンテナンスコストの上昇やサービスレベルの低下の恐れがあることがDXレポートでも指摘されています。

 

また、5GやWi-Fi6の実用化により、高速・大容量のデータ通信時代が到来しデジタル市場が急速に拡大することで、企業が取り扱うデータ量が爆発的に増え、新しい業務やサービスへの対応の遅れやビジネスへの対応が困難となるなど、企業経営に支障をきたすことが予想されます。

 

出典:経済産業省のDXレポートをもとに弊社作成

2025年の崖を前に企業がとるべき対応策

2025年の崖は社会的課題であり、各企業は自社の業務やIT・人材を含めて見直しを行い、今後の対策を講じる必要があります。

経営トップによる中長期的なコミットのもとでのITを中心とした社会への変革に対する取組みの計画と実践が迫られます。

不確実性が強い激変の時代に対して強いリーダシップを発揮し、取り組むことが重要です。

 

対応1:未来志向の経営・IT戦略

基幹システムの単純刷新ではなく、業務の変化・スピードに柔軟に対応できる基幹システムへの全面刷新を行うロードマップを描き、適切な投資を行うことが求められます。

 

対応2:高度人材スキル保有者の育成

レガシーシステムを維持しながらDXへの基幹システムの全面刷新を行っていくために、新技術やスキル・経験の蓄積を行うと共に企業と社員の成長を促すスキル成長計画を実践することが求められます。

社員教育による成長と共に、中途採用やITパートナーとの協力によるスキル育成の実践などの人材計画の立案が考えられます。

 

対応3:DXの推進

「基幹システムの刷新」「高度人材スキル保有者の育成」などを踏まえ、未来志向の経営・IT戦略に基づいたデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進・実現が求められます。

企業としてのビジョンを描き、計画的に推進することにより、自社の成長のみならず社会に対しても貢献していくことが大切です。

 

さいごに

不確実性が強い激変の時代に対して迅速に社会ニーズへの対応を含め、スピードと適切な判断による経営・IT戦略を行う必要があり、価値観や生活スタイルの変化に柔軟な対応が必要となります。

そのために企業が有するレガシーシステムの課題の棚卸を俯瞰的に実施し、DX実現による成長と社会貢献が求められていくでしょう。

 

今後とも岡三情報システムのEvangelistを宜しくお願いします。

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